こんにちは、歴くまです!
今年の初めに話題になった「ブレグジット」ですが、再び話が盛んになってきました。
ブレグジットとは、イギリスの欧州連合(EU)離脱を指す造語です。
イギリスへは一度行ったことがあるのですが、一緒に肩を組んで写真を撮ってくれたロンドン塔の衛兵であるヨーマン・ウォーダーや、ため息をつきながらも学生証を忘れた私を学生料金で入れてくれたウェストミンスター寺院の受付のお姉さんなど、みんなとても優しい人ばかりでした!
しかし、今ではその人たちもEU離脱か残留かで争っているのかと思うと胸が痛みます。
今回は、ブレグジットについて、簡単にわかりやすく解説したいと思います。
ブレグジットとは何か?
冒頭でも述べましたがブレグジットとは、イギリスのEU離脱を指す言葉です。
「イギリスの」という意味を持つ”British”と、「離脱」を表す”exit”が組み合わさり、”Brexit(ブレグジット)”となりました。
では、なぜブレグジットはここまで揉めに揉めているのでしょうか?
キーワードはEUの深化と北アイルランド問題です。
EUの深化―主権はロンドンか、ブリュッセルか
EUのようなヨーロッパにおける共同体の構想の根底には、東の大国ソ連を仮想敵国とした反共主義がありました。
1950年、ドイツ系民族でありながらフランスの外相であったロベール・シューマンがシューマン宣言を発表し、欧州石炭鉄鋼共同体設立条約が策定されます。
内容は欧州の石炭・鉄鋼を共同で管理するというものでしたが、同時に仇敵であったフランスとドイツの溝を埋めるものでもありました。
これを皮切りに、経済やエネルギーの分野でもヨーロッパの統合を図ろうとする動きがでてきます。
1967年にはEUの前身であるEC(ヨーロッパ共同体)が発足し、ヨーロッパの国々はより強く結ばれることになります。
共同市場の設立、国境の撤廃、そしてソ連の崩壊により、政治的にも協力すべきだという意見が出てきます。
そして、1992年、現在のEU(欧州連合)が設立されます。
EUはヨーロッパの統合をより深化させるもので、経済以外にも外交、司法、内務などにおいても一体化が図られました。
そのような中で出てきたのが欧州懐疑主義です。
EUの超国家的性格から、国家の主権が脅かされるのではないかとの懸念が広がったのです。
例えば、あるEUの政策に対して、イギリスでは国民の大多数が反対していても、ヨーロッパ全体では賛同する人が多ければその政策は実行されてしまうかもしれません。
これではイギリスの国民は不満たらたらですよね。
事実、EUに加盟していることにより移民が流入し、イギリスは不満に思っています。
さらに、フランスやイタリアは移民が地中海沿岸の国々に偏っていることに納得しておらず、これらの国々が公平な移民の受け入れをEUに働きかければ、イギリスへ来る移民はさらに増える可能性があります。
移民問題は数多くある問題の一つですが、このような問題に関して自国の意見より欧州の意見が優先されるかもしれない事態にイギリスは危機感を覚えたのでしょう。
北アイルランド問題―イギリスの火薬庫
北アイルランドは、アイルランド島の北東部にあるイギリス構成国です。
もともとアイルランドはイギリスに支配されていましたが、アイルランドのナショナリズムの高揚により、独立の機運が高まりました。
しかし、この運動に反対する人々がいました。
それがアイルランドに移住したイングランド・スコットランド系入植者の子孫たちです。
彼らはプロテスタントであり、カトリックが大多数を占めるアイルランドが独立すると、宗教的に少数派となってしまうことを恐れたのです。
彼らが多く住む北部6州(北アイルランド)は、独立反対の傾向が最も強い地域でした。
時代を経て、北アイルランド以外の地域(南アイルランド)はアイルランド共和国として独立し、さらに1949年にはイギリス連邦も離脱します。
北アイルランドはプロテスタントが多数派であったため、プロテスタントが優遇される政治が行われます。
当然カトリックの人々はプロテスタントを憎みます。
その感情は、やがて北アイルランドにおけるカトリックの保護から、北アイルランドの分離独立へと結びつき、IRA暫定派というテロ組織を生むことになります。
1970年代には対立の頂点を迎えた北アイルランド問題でしたが、EUの設立などにより北アイルランド、アイルランド共和国間でも人の行き来が自由になると、問題は鎮静化していきます。
1998年、アイルランド共和国はベルファスト合意により北部6州の領有権主張を放棄しました。
しかし、イギリスがEUから離脱すれば北アイルランドとアイルランド共和国の国境には再び物理的な国境が置かれ、70年代のような惨事が繰り返される可能性もあります。
北アイルランド問題は、ブレグジットを目指すイギリスにとって目の上のたん瘤となっているのです。
まとめ
ブレグジットについて、簡単に解説してみました。
今回はブレグジットに関わる要因としてEUの深化と北アイルランド問題を挙げましたが、経済面や安全面など、他にも様々な要因が雁字搦めになって今の状態があります。
4月上旬には10月末までブレグジットが延期されましたが、果たして「合意なき離脱」は避けられるのでしょうか?
イギリス、そしてボリス・ジョンソン首相の今後の動向に注目です。